VOL.0 Session #001VOL.0 Session #002VOL.0 Session #003
 
グローバルな産学連携体制の展開を目指すGITI ALLIANCEと、その日本拠点として期待される新しい大学。その実現へ向けて 国内外の側面において、今後取り組む行動計画を語った。
     




富永 GITI ALLIANCEの構図ですが、私と西さんはどちらかいうと産業界に直結し博士論文になり得る研究課題、研究ビジネスができる大学院の仕掛けを、そして大崎さんには高校生へのアピールという切り口の長期的な戦略を、この両方の視点から作っていきたいと思います。
まず、産業界との連携を構築する上での最優先課題は、研究ビジネス展開をするためのスタンスを今から作ることだと思います。日本で今この話をしても、萎縮して後ずさりされてしまうでしょうから、今後の3年間は中国、インド、韓国を中心としたアジア地域にいて、この仕掛け作りをしていくつもりです。
西 外国を対象に準備を進めるのは、私も大賛成です。バブルが破裂し銀行も破綻し、今の日本は戦争が終わった時の焼け野原の東京と同じようなイメージになっている。私は戦後の世代ですが、戦争直後の東京の写真や本を見ていて非常にいいなあと思うことがあります。それは、みんなが勤勉だったこと。勤勉さというのは絶対に必要だし、勤勉な人は今でもいる。
けれども戦争が終わった直後の日本と、今の日本と決定的に違うことが一つあります。コンプライアンスという言葉です。今は、「これをしてはいけない、あれをしてはいけない」という、してはいけないことのリストが必要以上に増えすぎた。会社やお金に関係することにはコンプライアンスは必要だけど、そのリストを見るだけで皆やる気を無くすわけです。私は会社でも大学でも、「何してもいいからとにかくやれ」と言ってきた。あらゆる行動を制限するものを外して自由にやらせてみなければ、結果は出ないと思うからです。日本は中途半端に西洋化されてしまって、コンプライアンスという概念に手足を縛られている気がします。新興国といわれている地域ではまだそういった規制が比較的少なくて、自由な発想を持っていると思います。今からそういうところと一緒に様々なプロジェクトを展開していけたら、良い結果が出るのではないでしょうか。
富永 コンプライアンスというのはルールですからもちろん大事ですけれど、もしもそのルールが合理的でなかったり問題があるようなら、我々はそれをポジティブなものに変える提案をして直していかなければいけない。そこを変えていくために知恵を出したり行動しようとすること自体を、コンプライアンス違反としてタブー化してしまう思考、社会構造にしてしまったらおしまいです。でも頭のいい人ほど、できない理由の説明をするんですよね。
西 ある種の伝染病みたいなものですね。コンプライアンスという空気を吸って、「だめだろう」という病気に感染したら、もうそこで止まります。だからコンプライアンスの空気が満ちている世界では、コンプライアンスの空気を吸わないで我慢しながらやるしかない。だめだと思っていない人たちだけが残って、未来を作ることができるんじゃないか。とにかく楽観的な、楽観的実行が今の日本を救うのではないかと思います。
 
     
 

富永
 GITI ALLIANCEという地球的規模の構想は、その仕組みの中に、できれば100年200年の先まで生き延びる構造をセットするために、しっかりとした経済的基盤をもつ必要があります。何よりも事業的に成り立たなければ実現できません。私は、これはEラーニング事業を行うことだと思います。小学生から高齢者に至るまで世界中の人たちが自由にアクセスでき、世界中の人たちが影響力を受ける教育環境を提供する仕組みづくりに本格的に取り組みたい。
Eラーニングは4、5年前からビジネスの構造ができてきています。日本にもいろいろなコンテンツがあり大学でも行われていますが、まだまだ未成熟な分野といえます。Eラーニングのコンテンツとそのデリバリー、それから永遠に発展させる仕組みが、基本的なプロフィッタブルなソースであると考えています。基本的には学びたい人は誰でも学ぶことができる広い門戸を持つものに、一定の能力の認定を得るのにそれなりの負担が必要という仕組みにしたい。この経費を誰が負担するかについては、学生であったり企業だったり、或いは社会であったりと様々なケースが出てくるでしょう。
また、資格の認定ができるEラーニングの必要性についても、これは現在も産業界が外国に人材を求める際に真っ先に直面する課題となっています。建築士や医師の国家資格のように、特定の分野においてその人の能力を客観的に判定できる基準は、エンジニアリングにおいてはまだ確立されておりません。国際的に共通する基準がない中で外国人技術者の能力をどのように判断するのかは、地球規模での人材の流動という面において重要な問題です。多言語対応の教育と国際共通の能力認定を実施するうえで、インターネットというツールは有用であると思っています。
GITI ALLIANCEの構想は、今から15年前、GITIの創設を当事の郵政省に提案しました。結果的には早稲田に作ることができましたが、創設時の思いは大学の枠組の中では十分に実現できませんでした。大学には大学ごとの風土がある。地球的規模の研究機関の構想ですから、1私立大学の帰属する形ではなく独立した機関として各国の類似の目標を持った研究機関と連携する連携研究大学、連携研究機関という仕掛けを作りたいと思います。文部省も近年そういう仕掛けの必要性に気がついていて、2つの大学が連携し、学生が2つの大学で学位を取得できるという構造も制度的に確立されましたし。このような連携の仕組みは、我々の事業の中に上手に取り込んでいきたいと思っています。私はたまたま早稲田大学の出身で、早稲田大学を定年退職した形の名誉教授なので、永遠に大学との関係が付いて回るし、また大学には全面的にバックアップしてもらうということが大前提になります。早稲田というブランドは、アジアでは非常に価値がありますから、そういった歴史的なことも上手に使いながら、すべての機関と連携できる仕掛けを作っていきたいと考えています。
     


富永 大崎さんが現在NPOとして推進されている高校生のネットワーキングと、我々の仕事とをうまくドッキングしていきたいと思っています。大崎さん、現在のお仕事について、またこの構想についてのお考えをお話いただけますか。
大崎 現在、全国の高等学校の文芸部や映像部音楽部等、コンテンツを創作するような部活をネットワークしています。今の日本人は教育システムの中で思考をしないように教育されていて、指示がなくては自ら進んで何かをやっていくという人がなかなかいません。でも、コンテンツ系の部活の子たちはそういう枠を飛び越えて、何かを表現するために文章や絵、映像などの創作活動をしています。全国各地の色々な創作活動をしている高校生たちが連携し、お互いに切磋琢磨していったら、この少し先には世界に通用するコンテンツが生み出されてくるのではないかと考えて、10年位前からこのネットワークを始めました。昨年、富永先生とお会いすることができ、そのうちにGITI ALLIANCE構想を伺いました。高校生のうちから大学の授業をEラーニングで見ることができると、高校生達は自分の進路について、もっと明確イメージすることができると思います。大学入学後のミスマッチがなくなることは、本当の意味での大学教育育成にも繋がるのではないでしょうか。
西 大学で教えていることをディスクローズした瞬間に、現在の高校から大学への進学のプロセス、進学システムは破綻すると思います。皆大学で実際に何をやっているのかを知らずに、大学案内の本を見て自分の進路を決めている。
 
     


大崎徹哉(おおさきてつや)

特定非営利活動法人 学校マルチメディアネットワーク支援センター 専務理事。 早稲田大学文学部演劇専攻卒業。アイワ株式会社、WOWOW、財団法人放送音楽文化振興会 専務理事を経て、現職。ハイビジョン番組、放送にプロデューサーとして関わってきた。 2001年に現在のNPO法人を設立し、「音楽」、「映画」、「アニメ」の全国大会を主催するなど、全国の高校生のクリエイティブ活動を支援する活動を推進している。


  富永 私もここに原点があると思います。大袈裟に言えば、現在の中学や高校は、特定の科目に関しては先生の総入れ替えが必要だと思いますね。だけどそう簡単に入れ替えるわけにはいきませんから、先生の派遣という方法が出てきますね。産業界で能力のある人に協力してもらって、高校の先生を認定して派遣する仕事をやればいいんですよ。高校の授業は、都道府県の教育委員会が発行する教員免状がないと教えられないことになっているけど、実は臨時教員はそうではないんです。だから、臨時教員の許可やプロセスをもう少しなんとかすれば、誰でも高校で教えられるようになる。実際に情報か何かの科目ではこういうことが行われています。
だけど、あまり誰でも先生になれるとなるとおかしくなるから、きちんと先生を教育するスキル作りの仕掛けが必要ですね。
西 高校の教員免状は、教育心理学など教育に関する教職課程を取ってないと取れないけれど、大学の教員にはこれが要求されないから、教育をする上で最低限理解しているべきことがわかっていない人もいる。教職課程に代わるようなケアができるとすれば、うまくいくと思うんですよね。
村川 私も、先生方が本当にごっそり変わる時代を待たないといけないと痛感しています。例えば、「こういう仕掛けを作っていけばもっと資質を向上できますよ」と先生方に言っても、「それをやっても、お給料は上がらないんですよね」という反応です。修士を取っても、英語が上手になっても何にもならない。受験対策は塾でやれば良い。そんな気持ちでいる方が非常に大勢いらっしゃるので、学校の英語教育環境は実力の無い先生方が多いのが現状です。
富永 情報の授業でも同じです。コンピュータの設計をしたことのない人が、コンピュータのアーキテクチャの教育をしたりということが行われていますし、学生もそれが平気になってしまう。
西 大学のお客さんは誰なのかということ考えたとき、学生がお客さんだとかいう大学もありますけど、私はこれは違うと思います。大学のお客さんは社会や産業であると思う。社会や産業にとって必要な人材を育てて供給するのが大学の役割です。ダーウィンの言葉で、「適者生存の法則(Survival of the fittest)」というのがあります。生き残る種というのは多い種でも強い種でもなくて、環境の変化に対応することができた種である、という法則です。アメリカの工学系大学で生き残っているMITやスタンフォードは、産業界や企業と連携して、そのニーズに応える教育を続けてきた。お客さんのご意向を聞いてカリキュラムを変えていけるメカニズムを持つ大学だけが生き残れるんです。クローズド・ループのメカニズムでは、大学はいずれ象牙の塔になってしまうのではないでしょうか。
富永 日本の大学教育は肩書き主義ですよね。大学がお稽古事みたいに、結婚式で仲人さんが紹介する為の学歴をつける教育をする場になっているから、学生お客さんという考え方がでてくる。学生にしても、単位をもらったというお免状をもらえば就職できるから、会社に入ってからちゃんと勉強しますという考えになってしまう。そういう考えが大学教育の1つの価値観になっていることは、エンジニアリングの世界で大変な衰退の原因になっています。一応の卒業資格ではなく、どのような能力をもっているか個別に判定をして卒業する仕組みが必要ですね。
西 社会と企業が大学を応援することは、勉強をする人達それぞれも応援することだと思います。大学院に戻れば学位が取れるといっても、会社を辞めなければいけないようでは成り立ちません。会社から求められる機密事項は守りながら、働きながら研究ができる仕組みが学校にあれば、本人にも企業にもメリットになります。それから高校生に対して、私は現在の学校が応えられていない課題があると思います。それは、進学して、その後就職があるんですが、未来の自分と社会との関係性を見出だせないということ。自分が将来何になって、それは社会にとってどんな意味があることなのか、というイメージを掴めてないんですね。これは学校に社会が関係し、社会が応援しなければできないことです。大学生という、社会に出るまでのワンクッションの時代に、社会に出たときの自分のイメージを持ちながら勉強ができたら、すごくいいと思います。
     


富永 今後3年間、アジアに軸足を置いた活動に集中していくわけですが、一方では日本の高校生という国内の問題があります。これも同じように、力を抜かずに取り組むべき課題ですが、具体的にはどのようなことから始めていくべきだとお考えですか。
西 国内的な部分での最優先課題は、未来を背負える才能を持つ人間を見つけ出し世界的に通じる人間に育て上げる、高校生に対するタレントスカウトの仕組みを作ることだと思います。
大崎 先程お話した映画甲子園では、192本の作品が集まりました。映画作りは相当な知的労働です。この映画甲子園というイベントは、原石を集めるイベントの開催がどうしても必要だと思って始めたものです。今後は、コンテンツだけではなく、技術系のコンテスト等もしていきたいと考えています。それから、教育の場は、もっともっと必要ですね。秋葉原が日本を代表するテクノロジー、エレクトロニクスとそのサブカルチャーの発信基地だということを考えると、新しい大学を秋葉原の近くに作ることは非常に重要な意味を持っていると思います。秋葉原発信の大学という、高校生のあこがれの場所にしていきたいですね。
富永 映画甲子園では、第一線のピカピカの監督やプロデューサーが、公私として映画制作についての講義をしていましたね。高校生の目の色が違いましたよね。非常に真剣に聞いていました。サンダンス映画祭のように、エンジニアリングにも登竜門になるようなコンテストがあったら良いですね。コンピュータやロボット関連のコンテストはあることはあるし、ロボコンのように比較的に成功しているものもあるけれど一般の高校生の参加がないし、やはり何か違うなという気がします。
西 秋葉原とは離れているかもしれないけど、琵琶湖でやっている鳥人間コンテストってありますよね?
実は大学でやってみたいのが、自動車と電気自動車の日本コンテストなんです。ボートや飛行機のコンテストもやりたいので、鳥人間コンテストのスポンサーに新しく参加したいと思います。動力が電池やハイブリッドのようなクリーンエネルギーだったら、新しい大学として開催できるテーマです。
富永 大崎さんの活動とドッキングして、映画甲子園やアニメ甲子園のチャンネルで高校生達が参加し、大学がその電気系の材料を提供するのはいかがでしょうか。私がやれるのはあと10年くらいですから、5年位経ったときに、次の世代にパスして一つのけじめをつけようと思います。30年先の未来を見越した5ヵ年計画をこれから作っていこうと考えています。皆さん、これからどうぞよろしくお願いいたします。

(終わり)


 
     
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